でーれーすげーげー

岐阜県岐阜市に在住です。ブログ名は、岐阜市近辺の方言で、とても感嘆したときに発する言葉です。

園芸を極めるぞ!

今年に入って買った園芸の基礎の本を読むと、なかなか参考になる。今まで知識も無く適当に切っていた剪定も、少しは理屈に従って出来るようになった。さらに、どんな道具があるのかも書かれている。必要なのは剪定バサミ、それから植木バサミ、刈り込みバサミ、剪定ノコギリや脚立である。

剪定バサミは無かったので、ホームセンターで買ってきた。しかし、深く握って切ると閉じたときに指先が柄に当たって痛い。浅く握って切ると当たらないのだが、そうすると保持しにくいし太い枝を切るときに力が入らない。

どうやらサイズが合わないようで、もう一回り大きいはさみを買った方が良いようだ。そこで調べてみたのだが、園芸用品の世界も結構奥が深いようだ。刃の作りや材質、握りの構造もいろいろある。握りは金属のベースにプラスチックが普通だが、高級なものは木製で、飾りがついている。

そんな多種類の園芸用品を扱う店が岐阜の鏡島にあるというので、先日出かけてみた。

さまざまな園芸用品が並んでいるのはホームセンターと似たようなものだが、店の一角が明らかに違う。ガラスケースに収められた園芸用品やハサミ類は作りが全く違い絢爛豪華なのだ。

たとえば剪定バサミでは柄が違う。プラスチックやアルミから木製に変わり、彫刻が入り、漆が塗られて、蒔絵まで入っている。刃の部分もステンレスではなくなり、黒さびでテカテカ光る鉄になり、鈍く光る鋼になってくる。

植木バサミも違ってくる。こちらは柄が鉄なので、そこに象眼が施され、金の細工が入ってくる。中には玉が埋め込まれているものがあり、厳重にガラスケースに収められている。しかも作者名が添え書きされている。出身地が地元関の人の名前の場合は刃の方が重要なのだろう。蒔絵の入った柄の剪定バサミは奈良県の作者の銘が入っている。

お店の人に聞いたところ、日本刀や螺鈿細工などの伝統工芸に携わる人が、その技術を生かして園芸用品を作っているのだそうだ。本格的な工芸品はそんなに数が出るものではないので、剪定バサミや植木バサミに技術を施すことにより、技能の維持や継承に役立てているそうだ。

見ると本当に美しく、切れ味も鋭そうである。これで切ったら実にスマートに枝が切れそうだと思うとよだれが出そうだが、いかんせん値段が全然違う。10万、20万は当たり前で、50万円以上のものがある。1980円で買った自分の剪定バサミでは性能も美しさもまるで太刀打ちできない。

そんな中で一段上に飾られているのが、「蒔絵螺鈿黒檀漆握・備前鍛造名長光」と命名された剪定バサミである。鎌倉時代に作られたもので、国宝級の剪定ばさみらしい。床の間に飾っておくどころか、博物館に陳列されてもおかしくないものが、世の中にはあるのだ。

ため息がでてしまうが、そんなピンのものを手に入れる余裕はない。しかしその美しさと使いやすそうな顔を見ると何とかして手に入れてみたいと思う。さっそくへばちゃんに頭を下げて、説得して懇願して、最後は「もうこれから二度とお酒を飲まないようにします。まあその方が健康に良いしね」という以前使った手まで使ってまた許してもらった。

ということで、30万円で柄は輪島の某氏、刃は関の某氏が作ったという剪定バサミを注文したのだが、受注生産と言うことで、納品はなんと来年の4月1日である。ちょうどウメが咲き終わり、細かい剪定をする時期である。螺鈿漆塗りの柄と刀鍛冶が鍛えた刃を持つ剪定バサミで、庭のウメの枝を切るという、最高の贅沢を味わえる日が楽しみである。