我が家には桜の木が1本ある。ソメイヨシノではなく人が食べられるサクランボがなる木である。大きくはなく、人の背丈ぐらいである。
ソメイヨシノより先に咲き、小さいサクランボがなる。果物屋で売っている栽培種のようには大きな実にはならないし、酸っぱくてそれほどおいしくはないが、娘はよく食べる。
しかし、鳥もまた、この木にサクランボがなることを知っていて取りに来る。昨年は「そろそろ収穫時だな」と思っていたら、翌日すっからかんとなくなっていた。どうやら集団で取りに来るらしい。
今年も実が赤くなり、そろそろ食べ頃になってきた。とはいえそんなにおいしくはないので「取ろうかな、放っておこうかな」と思っていたら、ヒヨドリが数羽飛んできて、ついばみ始めた。
「そんなにおいしくない」とわかっていながら、目の前でつつかれると惜しくなる。窓から手を振って「こりゃ!あっちいかんか!」と声を上げた。鳥はすぐに逃げるかと思いきや、全然飛び立たずついばみ続けている。
「なんと!人をおちょくっとる!」と更に腹が立ってきたので、庭に出て木に近づいたら、さすがに逃げ出した。しかし、軒先に止まってこちらをうかがっている。そんなに高いところではないのに、私が下に来ても逃げ出さない。
どうも、慣れたものらしい。他の家でもこんな騒ぎをしているのだろう。
全く食べられなかったら残念なので、慌てて色づいた実を収穫する。残ったのはまだオレンジ色で熟し切ってはいないものばかりになった。さすがにその後は来なかったが、たくさん残っているので数日後に熟せばまた食べに来るだろう。
我が家でこのサクランボを喜んで食べるのは娘だけだが、ある程度食べればもう必要無い。ちょっとだけ食べて、残りは鳥にあげても良いのだが、全部はダメだ。全部は!